
この記事のポイント
- PCR検査は、病原体の「遺伝子」を検出する高精度な検査です。
- クラミジア・淋菌は無症状のことが多く、気づかずに過ごすケースが少なくありません。
- 放置すると不妊症などの合併症を引き起こす可能性があります。
- 婦人科・泌尿器科・内科などで気軽に相談できます。
性感染症のPCR検査とは何ですか?
PCR検査(ポリメラーゼ連鎖反応検査)とは、クラミジアや淋菌などの細菌・ウイルスが持つ「遺伝子(DNAやRNA)」を検出する検査方法です。
体内に侵入した病原体の量がごく少量であっても、遺伝子を増幅させることで検出できる可能性があります。これは「核酸増幅検査(NAAT)」とも呼ばれ、従来の細菌培養検査と比べて感染初期でも検出しやすいという特長があります。
わかりやすく言うと…
病原体の「設計図(遺伝子)」をコピー機で何百万倍にも増やして、肉眼では見えないほど少ない菌でも「いるかどうか」を確認できる検査です。体の中に少しでも病原体がいれば、その遺伝子を見つけ出すことができます。
PCR検査でわかる性感染症の種類
日本では以下の性感染症の診断にPCR検査が広く使われています。
| 感染症名 | 主な症状 | 特記事項 |
| クラミジア感染症 | おりもの増加、排尿時の違和感など | 約70〜80%(女性)が無症状 |
| 淋菌感染症 | 膿性のおりもの、排尿時の痛みなど | 咽頭(のど)も感染対象 |
| 咽頭クラミジア | のどの痛み、違和感など(無症状も多い) | オーラルセックスで感染 |
| 咽頭淋菌 | のどの痛み(無症状の場合も) | オーラルセックスで感染 |
PCR検査の3つの特徴
① 少量の菌でも検出できる
感染初期は体内の菌の量がとても少ないため、従来の細菌培養検査では見逃すことがありました。PCR検査は遺伝子を増幅させるため、微量でも検出できる可能性があり、感染早期の診断に有用とされています。
② 高い感度と特異度
米国CDC(疾病管理予防センター)の性感染症診療ガイドラインでは、クラミジアや淋菌の診断には核酸増幅検査(NAAT)が推奨されています。
| 感度(Sensitivity) | 実際に感染している人を「陽性」と正しく判定できる能力(見逃しにくさ) |
| 特異度(Specificity) | 感染していない人を「陰性」と正しく判定できる能力(誤診しにくさ) |
③ 採取が比較的簡単
検査に使う検体は感染が疑われる部位によって異なります。多くの場合、痛みの少ない採取方法で行えます。
| 検体の種類 | 主な対象・用途 |
| 尿検体 | 男性のクラミジア・淋菌検査など |
| 膣ぬぐい検体 | 女性のクラミジア・淋菌検査など |
| 咽頭ぬぐい検体 | オーラルセックスによる咽頭感染が疑われる場合 |
「症状がないから大丈夫」は危険!無症状感染に注意
性感染症の怖いところは、感染していても症状がほとんど出ないことがある点です。
クラミジア感染症の無症状率(報告データ)
- 女性:約70〜80%が無症状
- 男性:約50%が無症状
つまり感染者の半数以上が「自覚症状なし」の状態で生活しています。
「排尿時の痛み」「おりものの変化」「のどの違和感」などの軽い症状も、性感染症のサインである可能性があります。一般的な風邪や膀胱炎と思って放置してしまうケースもあるため、気になる症状がある場合は医療機関への相談をおすすめします。
放置するとどうなるの?合併症のリスク
性感染症を治療せずに放置すると、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。早期発見・早期治療が重要です。
| 対象 | 放置した場合の主な合併症 |
| 女性 | 骨盤内炎症性疾患(PID)、卵管炎、不妊症、子宮外妊娠のリスク上昇など |
| 男性 | 精巣上体炎(副睾丸炎)、前立腺炎、不妊症のリスクなど |
| 共通 | パートナーへの感染拡大、HIV感染リスクの上昇など |
PCR検査の流れ
性感染症のPCR検査は、以下の流れで行われます。多くの場合、短時間で完了します。
①受診・問診
医療機関を受診し、症状や心当たりを医師に伝えます。プライバシーは厳守されますので安心してください。
②検体採取
尿・膣ぬぐい・咽頭ぬぐいなど、感染が疑われる部位に応じた検体を採取します。
③遺伝子検査
採取した検体を専門の検査室で分析し、病原体の遺伝子(DNAやRNA)を検出します。
④結果判定
病原体の遺伝子が検出された場合は「陽性」、検出されない場合は「陰性」と判定されます。
⑤治療・フォロー
陽性の場合は適切な抗菌薬などによる治療が行われます。パートナーへの検査も重要です。
検査はどこで受けられますか?
性感染症検査は、以下の医療機関で相談・受診できます。
- 婦人科・産婦人科(女性)
- 泌尿器科(主に男性)
- 内科・感染症内科
- 性感染症専門クリニック・STDクリニック
こんな症状があれば早めにご相談ください
- 排尿時の痛みや違和感
- おりもの・分泌物の変化(量・色・においなど)
- のどの痛みや違和感(オーラルセックスの経験がある方)
- 不特定多数の相手との性行為があった場合
- パートナーが性感染症と診断された場合
まとめ
性感染症のPCR検査は、病原体の遺伝子を検出する精度の高い検査法です。
- 少量の菌でも検出できる可能性があり、感染早期の診断に有用
- クラミジアや淋菌は無症状の感染者が多く、気づかずに過ごすケースも
- 放置すると不妊症などの合併症につながる可能性がある
- 心配なことがあれば医療機関に気軽に相談することが大切
性感染症は早期発見・早期治療で完治できるものがほとんどです。
気になることがあれば、一人で悩まずに医療機関へご相談ください。
参考文献・出典
本記事は以下の医学的資料・ガイドラインをもとに作成しています。
Centers for Disease Control and Prevention (CDC) Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021. MMWR Recomm Rep. 2021;70(4):1-187
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/rr/rr7004a1.htm
日本性感染症学会 性感染症 診断・治療ガイドライン 2023年版
https://std.amebaownd.com/
厚生労働省 性感染症に関する特定感染症予防指針(平成24年厚生労働省告示第16号)
https://www.mhlw.go.jp/
国立感染症研究所 感染症発生動向調査(IDWR)クラミジア感染症・淋菌感染症
https://www.niid.go.jp/
※本記事は医療情報の提供を目的としており、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。症状や治療については、必ず医師や医療機関にご相談ください。
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